正義とは何か?「正義の教室」の概要と感想[画像で簡単に分かりやすく解説]

こんにちはユキドケです。

今回は、「正義の教室」という本を読んだのでここで書かれていた正義について話をします。

 

 

3つの正義

「正義の教室」では、3種類の正義について書かれています。 

 

功利主義

平等の正義です。

多くの人を幸せにすることが正義であるという考え方です。

 

自由主義

自由の正義です。

皆が自由に生きられることが正義であるという考え方です。

 

③直感主義

宗教の正義です。

道徳的な正しさの尊重が正義であるという考え方です。

3種類の正義

この作品ではそれぞれの正義を美少女化したようなキャラが出てきます。

彼女たちが主人公と共に倫理の授業を通して正義を考えるというような内容になっています。

功利主義

功利主義は、幸福の最大化を目指します。

その際に幸福の量だけでなく質も重視します。

功利主義

そんな功利主義にも問題点があります。

 

①幸せの質を計れるのか

例えば貧困層と富裕層に食事を提供する場合は

飢えた貧困層の方が富裕層よりも大きな幸せを手に入れられます。

しかし、世の中の全ての幸せを数値化して比較するのは現実的では無いように思います。

 

②全体重視で個人の権利が軽視されがち

全体の幸福を重視する為に富裕層から貧困層への分配が多くなります。

こういった全体の為に個人の感情を軽視しがちになります。

功利主義の問題点

この本の物語では「功利主義」の女の子に対して次の問題点を突きつけます。

 

臓器くじ問題

①臓器移植が必要な人が4人います。

②彼らはそれぞれ別の臓器が必要です。

 

上記の場合に健康な1人の犠牲で4人を助けるのは問題ないのか?

功利主義的には1人の不幸と4人の幸福のトレードなのでやった方が幸福が増えることになり喜ばしいです。

 

しかし、なんの関係もない1人を犠牲にすることは普通に考えれば忌避される行為でしょう。

臓器くじ問題

自由主義

自由主義は人々の自由を目指します。

本来は自由主義の中にも色々と考え方がありますが本書ではざっくり2つに分類しています。

 

①弱い自由主義

幸福の為には自由が必要と考えるタイプです。

こういった自由主義に対して本書では、功利主義的だとしています。

 

②強い自由主義

自由であることが何より大事だとするタイプです。

本書では、こちらが真の自由主義だとしています。

この後の話ではこちらの真の自由主義についての話になります。

自由主義

そんな自由主義にも問題点があります。

 

①格差拡大と自己責任による弱者切り捨て

自由にさせると成功者もいれば成功できない者も現れます。

こうした、自由に競争させた結果による弱者を自己責任として切り捨ててしまいやすくなります。

 

②合意の上での非道徳行為の増加やモラルハザード

自由主義では他人の自由を奪わない限り自由で良いとしています。

 

ですが、お互いに合意の上であっても片方がリスクを適切に判断できない場合などもある為、そこにつけ込んだモラルハザードが起こってしまう危険性があります。

自由主義の問題点

この本の物語では「自由主義」の女の子に対して次の思考実験を行います。

無知のヴェール

自身が置かれている立場、人種、健康状態など様々な要素を忘れてしまったと仮定して質問に答える。

 

すると万人共通の2つの原理が出てくる

①自由の原理

性別、種族、宗教など差別なく自由でいられるべき。

 

②格差の原理

病気や貧困層など最も不遇な層が最も利益を受ける格差であれば容認できる。

 

自由主義であったとしても完全な弱者切り捨てはやはり問題がある訳ですね。

無知のヴェール

直感主義

直感主義は道徳的な正しさを重視します。

そして、正しさは考えて決めるようなモノではなく皆が共通の正しさを知っていて素直にそれに従えばいいとしています。

 

なので、物質や言語で表せるものではないともしています。

直感主義

そんな直感主義にも問題点があります。

 

①直感で感じているので説明ができない。

 

相対主義的な価値観が主流

直感主義の問題点

ここまで話をした上で本書では相対主義と絶対主義の歴史の説明が入ります。

 

絶対的に正しいものがあるとする「絶対主義」に対して全て相対的なものだとする「相対主義

 

完璧な正しいは、イデアにあるとする「イデア論」に対して全てはただの原子の集まりとする「原子論」

 

名前や言葉に対応したモノがそれ自体として存在するとした「実在主義」に対して人がただ名前をつけただけとする「唯名論

 

合理的に考えれば絶対的な正しいに辿り着けるとする「合理主義」に対して経験によってそれぞれの正しさがあるとする「経験主義」

 

この話をした上で直感主義の様な絶対的な正しさがあるとする「絶対主義」的な流れは途絶えて

今は「相対主義」側の「構造主義」が主流だとしています。

この本の物語では「直感主義」の女の子に対して次の問題を提示します。

 

ロッコ問題

①線路を切り替えないと5人が犠牲になる

②あなたが線路を切り替えると1人が犠牲になる

 

あなたの意思で1人を犠牲にするのか?

直感主義のように正しさは直感で分かるとするならこの一見するとどちらも選び難い問題でも正しい方を選べなくてはなりません。

 

本書の女の子は答えを出しますが同時に吐き気を催してしまいます。

トロッコ問題

構造主義

3つの正義について学び正義とは何かを見つけた主人公に哲学史の最期に出てきた主義、構造主義ポスト構造主義について説明があります。

 

構造主義では

人は様々な構造に縛られていて自由に判断することはできないとしています。

なので、人の考え方はその社会のシステムによって決まってしまいます。

 

ポスト構造主義

構造主義の今の状態が良くないなら構造を見直して作り直すべきだ

という考えに対してその直すべきだという考えも今の構造の中から出てきた考えにすぎないので今の構造以上にすることはできないとしています。

構造主義

そして、全ての授業を終えた主人公は最後に意外な行動に出て物語が終わります。

 

感想

個人的には正義を分類するという試みが非常に面白かったです。

また、物語がラノベ風になっていて子供にも読みやすく作られているので哲学のとっかかりとして読むのに向いていると思います。